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2005年03月02日
『“横田” ~基地内の日常・住民の被害感~』石丸彰
[Change of Command Ceremonyを取材して]
2005年2月10日、Yokota Air Base(在日米軍横田基地)にてChange of Command Ceremony(指揮権交代式)が執り行われた。横田基地に駐在する軍人だけでなく、日本に駐在する、米軍がもつ陸軍・海軍・空軍・海兵隊すべてを統括する指揮官の交代であるため、4軍の軍人たちが集まり、盛大に式典がなされた。内容は、前指揮官Lt General Thomas C. Waskow(トーマス・C・ワスコー中将)から、現指揮官Lt General Bruce A. Wright(ブルース・A・ライト中将)への指揮権の交代である。普通の式典には出席しない四ツ星の軍人が出席しての式典であり、僕を案内してくれた基地の方は「たいへん珍しいことだ」と言ってそのスゴサをアピールしていた。
式典自体は午前11時から約1時間半ほどであっただろうか。United States Forces, Japan, Joint Band(在日米軍統合軍楽隊)による演奏が数曲続いた後、部隊整列・副官合図・司令官入場・栄誉礼・祈祷・閲兵となる(当日配布された式次第に依る)。国歌斉唱はStaff Sergeant Jamie Gilley(三等軍曹ジェイミー・ギリー)。小野寺外務大臣政務官などの日本の政治的重役が来賓として参加しているためか、日本のことを配慮してかわからないが、まず『君が代』その後に『The Star Spangled Banner』(アメリカ合衆国国家)が歌われた。きれいな音色で、また、軍服を着た白人男性が歌っているということもあってか、僕には印象深い国歌斉唱であった。
一連の儀式の後、式典に招待されたPresiding Officers(執行監督官)である
Admiral Thomas Fargo(トーマス・ファーゴ海軍大将、太平洋軍司令官)
General Paul Hester(ポール・へスター空軍大将、太平洋空軍司令官)
そして
前指揮官Lt General Thomas C. Waskow
の挨拶があり、勲章授与・指揮権継承・
現指揮官Lt General Bruce A. Wright
の挨拶へと続く。
僕には眼前で行われている式典の意味をよく理解していなかった。当日、僕はフリージャーナリストとして扱われ、フジテレビや日本テレビなどの民放各局の撮影班と同列に並ばされた。周囲のメディア関係者から奇異な目で見られながらも、大きなカメラを回す彼らの横で、小さなハンディーカムで撮影していた僕はその状況に圧倒されて小さくなってしまい、それどころではなかった。いわばこれは在日米軍トップの就任式だ。livedoorのニッポン放送株問題が大々的に放送されていたため、このニュースはあまり放送されていなかったが、イラク戦争・北朝鮮問題などを考える上では重要な出来事である。
在日米軍は日本の安全保障と密接な関係にある。在日米軍というと、沖縄がメインとなるが、今回僕は東京都にある「横田基地」をメインに、在日米軍のことを捉えなおしていく。日本の安全保障と密接な関係にあるにもかかわらず、厳しい批判にさらされている在日米軍。中でも、空輸の中継地として大切な役割を果たしている横田基地。横田基地における日常は、また問題とされている周辺住民への公害とはいかなるものなのかを考えていこうと思う。
〈横田の日常を探る〉
[横田基地周辺の日常]
横田基地およびその周辺の日常生活は非常に穏やかなものであった。当然のことながら福生第2ゲート前は車が行きかうだけであり、周辺住民の監視やデモはなかった。新設マンションの建設中止を求める「○○は出て行け」というような垂れ幕がかかっているわけでもない。福生第2ゲート前を走る国道16号線沿いを少し歩いてみたが、横田基地を非難するような張り紙やビラは一切見られなかった。それどころかむしろ、英語で書かれた看板やショーウィンドウの値札が目に付き、基地関係者に対する配慮を店側が行う姿も見受けられた。だが、このような配慮がなされているものの、基地関係者が周辺経済を支えているというわけではなさそうだ。新横田基地公害訴訟団代表の大野氏は「1ドル360円の頃はアメリカ人が頻繁に利用し、福生の飲み屋なんかは多少儲かっていたようだが、円高が進んだ今は、そのようにして栄えた店も繁盛しなくなってしまった」という。他に、近隣マンションの壁には「福生・横田フレンドシップコンサート」というポスターが何枚も張ってあり、基地内楽団と福生市民との間の友好催が行われていることがわかった。人通りの多寡は住宅街のそれと同じであり、基地があるからといって人々が外出しないわけでもない。ただ、911を継起としてテロに対する危機感を募らせているためか、日本の警察のパトカーが国道16号線を巡回している。
[横田基地の日常]
実際の基地内はどうなっているか。残念ながら基地内のビデオ撮影は許可されなかった。おそらくは、基地内の立地状況が外部に漏れるのをできる限り防ぐためであろう。そのような推測の下、僕も回った順番に基地内描写を書き記すわけにはいかない。そこで、僕らの日常生活に当てはめて、在日米軍の方々の日常生活を考えていく。
僕らの普段の生活はどうのようになっているだろう。朝起きて通勤通学し、会社では働き学校では授業を受ける。授業には教室での学科もあればスポーツの時間もある。休み時間にもなれば校庭に出て遊び終われば教室に戻るだろう。クラブ活動をして帰宅し、テレビなどを見、食事などして寝る。休みの日には家でゆっくりしたり、家族で遊びにでかけることだろう。大雑把ではあるが、これが日本で僕らが行う日常だ。
基地での日常はどうか。滑走路を中心に東西に分かれた基地内の居住区には9階建てのマンションが乱立し、一軒家もいくつか存在する。一軒屋は位の高い軍人の家庭が居住するようで、下位兵はマンションのようだ。各マンションには、「Haneda Tower」「Tuiki Tower」など、日本にちなんだ名前がつけてある。通勤場所はもちろん軍隊であり、通学は基地内にある幼稚園から高等学校、分校ではあるが基地内大学もある(基地内大学では、空きがあれば日本人も授業を受けることができるようになっており、その仲介は基地以外の民間組織が行っている。詳細)。運動ができるように、野球グラウンド・陸上トラックなどがあり、アメフト用のスコアボードも立てられていた。生徒たちはここでスポーツをし、クラブ活動をするのだろう。時には大人たちが草野球を楽しむこともある。先日メジャーリーガーが日本に来日したときには、何人かの選手が横田を訪れ、野球を楽しんだ。家庭生活が十分に行えるように、雑貨や食品などの生活必需品を購入するショッピングセンターもあり、基地内住民の方々はそこで生活用品をそろえる。中にはファーストフードやら小物売り場やらがあり、日本のゲームセンターにあるようなゲームがいくつもおいてあるスペースもある。子どもたちこそ遊んでいなかったが、日本のデパートを想起させ、ついつい笑顔がこぼれてしまった。当日の昼食は広報部の方と一緒にファーストフード店でとった。商品の値段はドル表示されており、店員ははじめ英語で話しかけてきた。相手が日本人だとわかると日本語で対応してくれたので、助かった。金額表示はドルであるものの、ドルでしか買うことができないのではなく、その日の交換レートがレジの前に書いてあるので、それにしたがって日本円に換算し、日本円で商品を買うことができた。基地内のファーストフード店のシステムはアメリカのそれと同じ。セットの飲み物はセルフサービスで、自分で注ぎにいかねばならず、そのかわり何杯でもおかわりができる。やはり味は濃い目だったが、意外にも量は日本とたいして変わらなかった。店内には迷彩服を身にまとった軍人が何人もいたが高校生風の男女も何人もおり、軍服さえ目につかなければアメリカドラマの一風景を見ているのとたいして変わらなかった。話を戻すが、休日・日曜日ともなれば、クリスチャンの人々は各居住区にある教会に行ってミサにあづかり、それぞれが各人の休日を過ごす。基地内にはボーリング場などの娯楽施設があるので、そこで家族や友人と楽しく遊ぶこともある。
基地内には、生活に支障のないよう様々な施設が存在する。学校・郵便局・教会・消防署・レクレーションセンター・ガソリンスタンド・公園・運動場などなど。特に、消防署は周辺自治体と協定を結んでおり、基地近隣で大規模火災が発生した場合は協力して消火活動を行う。9月1日防災の日には、石原都知事も参加した、東京都主催の防災訓練の開催地となった。でも、気にかかることが一つある。
「離発着の邪魔になりますから」
これは今回の取材の中で気になった言葉の一つだ。協力して消火活動を行うことの理由の一つとして、案内の方は確かにそういった。深い意味はなく自然と出た発言だろうが、消火の目的として「基地業務を正常に行うこと」を挙げたことに違和感を覚えた。
当然のことではあるが、僕らがあまり深く認識していない事実として、僕たちの生活と大差ない生活が基地内でも営まれている。米軍基地という特殊性を除けば、そこに広がっている生活は僕らのそれと変わらない。日本の中の小さなアメリカがそこには広がっている。
[基地としての横田、その日常]
とはいえ、そこは在日米軍基地なのである。南北に走る全長約3300メートルもの滑走路とその周辺にある軍施設。僕らと同じ日常だけが広がっているわけではない。
横田基地は空輸基地として大変重要な位置を占めており、朝鮮戦争・ベトナム戦争をはじめ、物資の輸送を主とした作戦を担っている。輸送機の離発着も日に十余~数十機。成田などの民間航空施設でも問題になっているように、航空施設ではその騒音問題をめぐって周辺とのトラブルが絶えない。実際僕が訪れた時、僕は飛行機の騒音がそれほど気にならなかった。しかし横田基地は現在、騒音もめぐっての訴訟問題を抱えている。
軍基地であるから、当然訓練も行われる。ただ、何度も述べるように、横田基地は空輸が専門の米軍基地であるから、陸軍が行うような射撃訓練・砲弾訓練はほとんどない。横田で行われる訓練は、日米が共同で行うもの・在日米軍全軍で行うものの他に、基地内エクササイズが年に数回。その内容は何か起こったときにどう対処するかの訓練であり、演習用のシナリオが用意されていて、「どこかの国がアタックしてきたらどのように避難させるか」などという訓練であるという。
〈周辺住民の被害感〉
映像資料:『基地公害-被害者の視点-』
(約30MBのwmvファイル)
(参照一覧)
・素顔の横田基地( http://www.geocities.jp/rhpqq324/index.htm )
・東京都の米軍基地対策( http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/kiti/hyoushi.htm#label )
・ 横田基地撤去と基地被害をなくす共同行動連絡センター( http://www.ne.jp/asahi/santama/roren/yokota/ )
・新横田基地公害訴訟団( http://www12.ocn.ne.jp/~syokota/ )
・Yokota Air Base(official)( http://www.yokota.af.mil/ )
・United States Forces Japan(http://usfj.mil/ )
・『安全保障』(田中明彦著, 讀賣新聞社, 1997)
・『情報公開法でとらえた在日米軍』(梅林宏道著, 高文研, 1992)
(取材協力)
・新横田基地公害訴訟団
・Yokota Air Base
投稿者 石丸 : 2005年03月02日 17:50